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会社の基礎を変えたいとき

ある会社で、うまくやっているところとそうでないところを分け、リニューアルやスリム化など、基礎から変えた方がよいところを検討しようと思っています。
会社の基礎的変更の典型である定款の変更、組織変更、事業譲渡につき見ていきましょう。

T 定款の変更

 会社内部の根本規則である定款を変更するには、株主総会の特別決議が必要です(466条、309条2項11号)。
 例えば、ランダム社はゲームソフト開発・製造・販売を事業目的として定款に記載していましたが、ゲームに登場するキャラクターが出迎えるアミューズメントパークや周辺の土地開発を手がけたいと考えています。そうすると従来の事業とはまったく違う種類のものなので、定款変更が必要です。定款変更は会社の根本規則の変更であり、会社の行く末が変わってくる重要な変更といえるので、普通決議でなく特別決議が必要です。
 定款変更を行なう際には、次の点で気を付けなければなりません。
イ. 種類株式発行会社で定款変更が特定の種類株式の株主に損害を及ぼすおそれがある場合は、その種類株主をメンバーとする種類株式総会の決議も加えて必要となること。
ロ. 公開会社が発行可能株式総数(授権株式数)を変更する場合、発行済株式総数の4倍を超える値に増やすことはできない(37条3項、113条3項)。
ハ. 株式譲渡制限の定めを設けて公開会社を非公開会社としてしまう場合(309条3項1号、107条1項1号・2項1号)や、非公開会社で剰余金の配当や議決権などにつき一部の者だけ(属人的)優遇措置を認める定めを設ける場合(309条4項・109条2項は、より重大な変更なので特別決議ではなく特殊の決議が必要です。

U 組織変更

 組織変更とは、株式会社が持株会社(合名会社・合資会社・合同会社)のいずれかに、または持株会社のいずれかが株式会社に変更することをいう(2条26号)。
 持株会社は、一言でいえば、会社の組織がシンプルで内部関係は原則として自治に委ねられている会社です。規則や手続も株式会社より厳しくないので、少人数で小回りのきく経営をするには持株会社の方がよいでしょう。
 さて、たとえばランダム社が株式会社から持株会社に変更するには、会社を解散・清算して新たに持株会社を設立する手続をとる必要がありません。ここに組織変更の便利さがあります。法人としても同一性を維持したまま別の組織に移行できるのです。
 たとえば、A社をabcの3人だけで医療手術シュミレーションソフトの開発に特化した合名会社に変身させるなら、「変更後の事業目的:医療用シュミレーションソフトの開発、商号:メディカルG合名会社、社員の責任:abcとも無限責任」とする。その他に効力発生日、本店の所在地など所定の事項を定める。これを組織変更計画といいます(743条・744条)。持分会社から株式会社への組織変更の場合は、変更後の発行可能株式総数や役員の氏名、社員が取得する株式数などを定めます(746条)。
 特に株式会社から持分会社への組織変更は機関設計や業務執行権限や株式(持分)の譲渡の容易性、社員の責任に変化が生じるので株式や債権者への影響が大きい。そこで組織変更計画の内容等一定の事項につき株式・債権者に開示が要求され(755条)、総株主の同意が必要になります(766条1項)。
 また、どちらの組織変更も、組織変更に異議を述べた債権者に弁済の担保提供等を行なうなどの債権者保護手続があります(779条・781条2項)。
 組織変更に瑕疵がある場合、提訴権者・提訴期間が限定されるものの、組織変更無効の訴えを提起できます(828条1項6号・2項6号、834条6号、825条〜839条)。
 なお、合名会社から合資会社に変更するなど、持分会社同士の変更は組織変更とはいいません。この場合は、定款を変更して会社の種類を変更すればすみます(638条)。

V 事業譲渡

1 意義
 事業譲渡は、株式会社が事業を取引行為によって他に譲渡することです。複数の事業を営む会社ならその一部や全部を譲渡することができます。
 例えば、A社が土地開発事業に乗り出したが、収益が伸びないのでその部門を他のディベロッパーに譲渡するような場合です。
 ゲームソフトに登場するキャラクターを利用したアミューズメントパーク部門が好調なので、思い切って独立(分社化)させようと子会社を設立し、そこに事業譲渡することも考えられます。
 事業譲渡を会社のスリム化や他の企業との合併に利用する方法もあります。
 全部を譲渡しても会社は解散するわけではないので新たな事業を始めることもできます。
 逆に、譲受けの場合、一般の合併のように株主まで吸収しないので組織は大きくならず、また譲り受ける事業も選択できます。会社法は、
@ 事業の全部の譲渡
A 事業の重要な一部の譲渡
B 他の会社の事業の全部の譲受け
C 事業の全部の賃貸、事業の全部の経営の委任、他人と事業上の損益の全部を共通にする契約その他これに準じる契約の締結、変更または解約
をまとめて事業譲渡等と呼ぶ(467条1項1号〜4号、468条1項括弧書き)。
 なお、「事業」とは従来の営業という名称が変更されたもので、事業譲渡の「事業」も競業禁止義務を伴う(旧商法24条)の「事業」と変わりないというのが判例の立場です。
 ただ、判例に対する批判は強く、株主に与える影響があるから総会の特別決議が必要だという点を重視し、競業禁止義務の有無や得意先関係の有無よりも、今後の会社の事業の継続が困難にならないかなど、株主への影響を考えた基準にすべきという考えが有力です。
 なお、事業の譲受けにあたらなくても、会社成立後2年以内に純資産額の20%超にあたる対価で成立前からある財産を取得するときは財産引受けの規制の潜脱を防ぐため、事後設立として株主総会の特別決議が必要です(467条1項5号)。


2 手続
 事業譲渡等は個々の財産を売買するのとは違い、会社の事業のあり方に重要な影響を及ぼします。そこで株主総会の特別決議が必要とされています(467条1項、309条2項11号)。譲り受ける資産に自己株式がふくまれるときは、取締役は総会で説明しなければなりません(467条2項)。株主総会招集通知に際して会社は事業譲渡等を行なう理由、契約内容の概要、対価の算定の相当性に関する事項の概要を記載した株主総会参考書類を株主に交付します(301条、施行規則92条)。事業譲渡に反対の株主には株式買取請求権(469条)があります。


3 手続を省略できる場合
(1) 譲渡会社の手続省略
 簡易事業譲渡
 「事業の重要の一部の譲渡」であっても上記の手続が不要な場合があります。
 例えば、A社が譲渡しようとするものが往年のゲームソフト「スーパーマリオ」にまつわる財産や権利一切だとします。1億円の総資産を持つA社にとり、どう見てもそれは1000万円の価値しかありません。譲渡しても大きな影響はないので、ランダム社の総会決議は不要です。
 このように、譲渡する資産が総資産額(施行規則134条)の20%以下(定款で下げられます)の場合を簡易事業譲渡といい、総会決議は必要でないとされています(468条2項)。

 略式事業譲渡
 譲受会社がA社の親会社B社であり、そのB社がA社の総株主の議決権の90%(定款で引上げ可)以上を単独で又はB社とその完全子会社C社とが共同でもっているとするとします。その場合やはりA社の株主総会は不要です(468条1項)。この場合は、総会でB社が賛成するので決議が成立するに決まっているからです。
 このように総会決議を省略できる事業譲渡を略式事業譲渡といい、B社のような会社を特別支配会社といいます。この場合B社(C社を含む)以外のA社の少数派株式は不満があれば株式買取請求権が認められる(469・470条)。
 この略式手続は合併等の場合も同じです。
 なお、A社が取締役会設置会社なら株主総会決議は不要でも、重要な財産の処分である以上、取締役会決議は必要です(362条4項1号)。

(2)譲受会社の手続省略
 簡易事業譲受け
 他の会社の事業全部を譲り受ける場合でも、株主に及ぶ影響がわずかなときは総会決議は不要です。
 例えば、1億円の純資産額(施行規則137条)のA社が2000万円以下でD社の事業全部を譲り受ける場合です。ただし、株主に通知・公告してから2週間以内に一定数以上(議決権を行使できる株式の、原則として6分の1・施行規則138条)の株主の反対があればランダム社は総会決議を省略できません(468条3項)。

 略式事業譲受け
 譲渡会社が特別支配会社である場合、つまり上記のB社がA社に事業全部の譲受につき総会決議が必要なはずですが、やはりB社の賛成により承認される可能性が高いのでA社の総会決議は不要となります(468条1項)。
 aの事業譲受けもbの略式事業譲受けも、それに不満な株無視には株式買取請求権が認められまる(469条・470条)。どちらも合併等の場合と同様の制度です。
 なお、A社が取締役会設置会社の場合、重要な財産の譲受けにあたるなら、株主総会は不要でも取締役会決議は必要です(362条4項1号)。


4 手続違反
 株主総会決議が必要なのに、それを経なかった事業譲渡等は、一般原則により無効です。
 ただ、取引の安全により、株主総会の特別決議を要することにつき譲受人が善意・無過失の場合には、会社は無効主張しえないというべきですが、株主の利益保護を重視すれば無効というべきです。

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